「カレッジフットボールを理解せずしてアメリカの文化を理解したと思うな!」と誰かが言っていました。
ちょっと強烈過ぎる言い方ですが、でも結構核心をついているように思います。秋から冬にかけての毎週土曜日、アメリカのスポーツはカレッジフットボール一色になります。みな、ひいきのチームの勝敗に一喜一憂し、秋の終わりころになると、そのシーズンにおいて調子の良いチームを応援している人たちはレギュラーシーズンを終えた後のボウルゲーム(翌年の元日前後に行われる各リーグの上位チーム同士の決戦)の話題で、調子の悪いチームを応援している人たちはひいきのチームのコーチ陣の去就の話題で持ち切りになります。カレッジフットボールチームのロゴが入ったTシャツ、キャップ等のグッズの売れ行きや、各チームを率いるコーチたちの契約金の額も日本の大学のスポーツチームのものとは桁が違います。また、チームに所属している選手が、コーチに起用してもらえないからと別の大学に移籍したりと、大学のスポーツ、というイメージで見ると驚くことも多数あります。その背後には、これもアメリカらしい商業主義の一端を見たりもしますが、まあ、そういった部分も含めて、このカレッジフットボールがアメリカの文化の一つの体現であることは間違いなさそうです。
さて、少し前置きが長くなりましたが、実は、アナーバーは、そのアメリカ文化、カレッジフットボールを理解するのに最適な街と言えるのです。それは、カレッジフットボール全米一の名門大学と言ってもけして言い過ぎではない、ミシガン大学があるからです。(ただし、ここ3年ほどは、ミシガン大学フットボールチーム史上、最も成績が低迷していることも付け加えておかなければいけませんが・・・。その3年間のチームの指揮をとったロドリゲスヘッドコーチは昨年いっぱいをもって4年間の任期途中で解任されました。)
アナーバーに住んでいる方、来る予定のある方は、ミシガン大学のフットボールチームは名門らしい、という話をどこかで耳にしたことがあるのではないかと思います。でも、どれくらいすごいかについてまでご存知の方は多くないのではないでしょうか。
そこで、今回は、ミシガン大学のフットボールチーム、Wolverinesがどれだけすごいか、について少し具体的な数字を挙げて説明してみたいと思います。(以下の数字は全て2010年のシーズン終了時点のものです。)
まず、最も輝いている数字は、歴代最多勝利(884勝)及び歴代最高勝率(.735)でしょう。長い歴史と数多くのチームが存在するカレッジフットボールにおいて、Wolverinesより勝利を挙げているチームは存在しないのです。
Wolverinesは1879年に結成された、全米でも最も古いチームの一つで、1896年以来、全米で最も人気が高く、かつ、最もレベルが高いとされているBig Ten Conferenceに所属し、同リーグ優勝回数は数えること実に42回。全米王者となった回数も11回を数えます。1936年に始まったカレッジフットボールチームの全米ランキングにおいて、シーズン終了時点でのトップ10以内の合計回数37回というのももちろん全米最多です。また、全米最古のボウルゲームで、そこで勝つことはカレッジフットボールにおいて最も誉れが高いと言われているローズボウル(1902年に米国の東側の王者と西側の王者の対決という目的で設けられたとのことです。)の第一回覇者でもあります。(第一回ローズボウルにおいて、東代表のWolverinesが49−0で西代表のスタンフォード大学を叩きのめしたため、アメリカ西部のフットボールチームはもっと実力をつけることが必要として、以後15年間ローズボウルは中止された、という伝説のおまけ付きです。)
Wolverinesは、以上のほかにも数々の伝説と記録を持っていますが、これだけでもいかにすごいチームであるかをおわかりいただけるかと思います。
以上の記録に加えて、Wolverinesのすごさを後押しするのがアナーバーにある、同チームの本拠地ミシガンスタジアムとそこに毎試合集結する熱狂的な観衆です。ミシガンスタジアム(通称”The Big House”)は全米最大の収容人数(約11万人)を誇るスタジアムで、しかも毎試合そのスタジアムが見事に満員になるのです。2010年9月には11万3090人という、観客数を正式に記録し始めて以来の全米カレッジフットボール最多観客数記録を樹立。さらに、1975年以来、実に35年間、全ての試合で観客数が10万人超える、という記録を更新中。アナーバーの街の人口が11万人ちょっとですから、試合のたびに全人口がスタジアムに集結しているような計算になります。
まだスタジアムに足を運んだことがない方は、どうしてこれだけ熱狂できるのか、と不思議に思われるかもしれません。そういう方は、ぜひチケットを持って試合の当日、S. Stateストリート沿いにあるミシガン大学のキャンパスあたりから、スタジアムまで歩いてみてください。それだけで、日本で言えば花火大会や縁日に向かう道で感じるのと同じ、ウキウキするような楽しい気分になれて、その謎が解けるはずです。
